用語集

Glossary
  • オーステナイト組織

    炭素(C)を固溶したγ鉄で、鋼をA1変態点以上に加熱したとき得られる組織である。面心立方構造をもち、非磁性で電気抵抗が大きい。炭素鋼では、1145℃で炭素を最大2.03%固溶する。炭素鋼を急冷しただけでは常温でオーステナイト単相組織は得られないが、マンガン(Mn)やニッケル(Ni)を多量に含む場合は常温でオーステナイト単相組織となる。

  • 鉄‐ニッケル合金

    Fe‐Niないしそれらに少量のCr、Mn等を含有する合金。低、高熱膨張率を特徴とし、電子素子の端子、振動板、バイメタル、磁気シールド等の電子機器部品に使用される。

  • ニッケル超合金

    Ni含有量が50%以上のニッケル基合金をいう。これらの合金は、汎用ステンレス鋼よりもはるかに高い耐食性や耐熱性がある。

  • オーステナイト系ステンレス鋼

    Cr-Ni系のオーステナイト組織のステンレス鋼で、SUS304およびSUS316が代表鋼種である。オーステナイト系ステンレス鋼は成形加工、溶接性、耐食性に優れ、各種機器および装置材料として広範囲に用いられる。

  • フェライト系ステンレス鋼

    Fe‐Cr系のフェライト組織のステンレス鋼で、SUS430が代表鋼種である。フェライト系ステンレス鋼は焼きなまし状態で磁性を有し、オーステナイト系ステンレス鋼と比較すると、一般的に加工硬化しにくく、耐食性や成形性等の種々特性も劣る。但し、Niが含まれないことから価格が安く、汎用材に使用されている。

  • 析出硬化型ステンレス鋼

    Cr‐Ni系ステンレス鋼にAl、Cu、Mo、Ti等を少量添加し、加工や熱処理によってマルテンサイト変態を生じさせた後、時効処理によって金属間化合物または固溶体を析出させて硬化するように設計した製品。NAS630やNAS631、NAS633が該当する。

  • 二相ステンレス鋼

    フェライトとオーステナイトとの混合組織のステンレス鋼。材料特性もフェライトとオーステナイトの特徴を有し、強度と靭性に優れ、耐応力腐食割れ性や耐粒界腐食性等の耐食性も優れる。

  • マルテンサイト系ステンレス鋼

    13Crに代表されるFe‐Crのマルテンサイト組織のステンレス鋼。焼入れ硬化性があり、刃物等に使用されるが硬くて脆いという欠点がある。加工性、溶接性、耐食性はオーステナイト系ステンレス鋼よりもやや劣る。

  • スーパーステンレス

    SUS304やSUS316に比べて、CrおよびMoの含有量が多く、Crは20%以上、Moは、5%以上含有し、耐食性はNi基高耐食超合金に匹敵するものもある。Cr、MoとともにNを0.2%以上、Niを18%以上含有するオーステナイト組織のものをスーパーオーステナイトステンレスと言う。

  • 加工硬化

    金属の塑性加工において、回復もしくは再結晶温度以下では加工にともない変形させる力が増加し、硬さや強さが大きくなる。これを加工硬化、またはひずみ硬化といい、結晶中の転位の数が増し、複雑にからみあって移動しにくくなることが原因である。

  • 加工誘起変態

    Ms点が高いマンガン鋼や準安定ステンレス鋼を加工するとマルテンサイト変態が促進される現象をいう。変態量は加工度が大きいほど、また加工温度が低いほど増大する。加工誘起変態を起こした鋼は著しく強化されるが、靱性や延性は低下する。

  • ステンレスバネ(ばね用ステンレス)

    ステンレス鋼は冷間圧延すると硬化してバネ性を有する。ステンレスバネ材として利用される準安定オーステナイト系ステンレス鋼のSUS301およびSUS304は、冷間圧延で加工誘起マルテンサイトに変態して硬化する。また、SUS631は冷間圧延で加工硬化後、時効処理を施すことで更に硬さが上がり、より安定したバネ特性となる。

  • 非磁性材料

    強い磁性を示さず、比透磁率μ0≒1の材料。オーステナイト系ステンレス鋼やチタン合金等が該当する。鋼種としてはNAS304やNAS316Lが該当するが、NASNM15MやNASNM17はより高い非磁性の特性をもつ。

  • 非磁性ステンレス鋼

    オーステナイト系ステンレス鋼は、焼きなまし状態では非磁性であるが、冷間加工によって加工誘起マルテンサイト相に変態することで磁性を帯びる。NAS316LやNAS305は一般的な非磁性ステンレス鋼である。一方、高Mn含有のNASNM15MやNASNM17は、加工により生じるマルテンサイトに磁性が無いため、強度の冷間加工でも非磁性を維持する。

  • 結晶粒度

    多結晶材における結晶粒の大きさ。一般にはこれを比較法又は切断法によって求めた粒度番号で表す。オーステナイト結晶粒度の試験方法はJIS等に規定されている。

  • 時効(処理)

    純金属または合金を急冷または冷間加工後、時間の経過に伴って硬さ等の性質が変化する現象、ないしはそれを生じさせる操作をいう。一例として析出硬化型ステンレス鋼のSUS631は、冷間圧延後に性質を調整するために、475±10℃x1時間の時効処理(CH処理)を行う。

  • 応力除去焼きなまし

    鉄鋼を再結晶温度以下の適当な温度に加熱保持して機械加工、溶接、鍛造などで生じた残留応力を除去する焼きなまし。

  • サブゼロ処理

    オーステナイトをマルテンサイトに変態させるために行う熱処理で、常温よりも低い温度へ冷却し、その温度で均熱する熱処理。深冷処理ともいう。

  • SR

    ストレスリリーフ(Stress Relief)の略で、応力除去焼きなましの一種。残留応力除去を主目的とした熱処理。

  • TA

    テンションアニール(Tension Annealing)の略で、応力除去焼きなましの一種。熱処理中に張力を加えることで形状修正を主目的とした熱処理。

  • 残留応力

    外力や熱勾配のない状態で、内部に存在している応力をいう。冷間加工、熱処理、溶接などによる不均一な変形や歪が生じた結果発生する。残留応力の方向としては引張りと圧縮があり、全体として残留応力は釣り合っている場合でも複雑で不均一な応力分布を生じ、形状や機械的性質に大きな影響を与える。

  • エッチング

    各種パターンを作るため、素材の不要部分を化学的又は電気化学的に除去すること。また、適当な腐食液を用いて鋼の組織を顕在化すること又着色すること。品物をマスキング(表面を部分的に被覆保護すること)し、アルカリなどで所定の形状にする方法もある。

  • 深絞り加工

    プレス成形の一種で、ポンチおよびダイスを用い、平板にポンチを押し込む事により、底付きの容器状の製品を作るもの。一般に深絞り用ステンレス鋼は、オーステナイト安定度が高く、延性に富み、異方性が少ない。

  • 多段絞り

    一回のプレス加工では成形の難しい複雑形状の製品や深い筒状製品の成形を、複数の工程でプレス成形すること。多段絞り用ステンレスは、NAS304LG等の軟質で加工硬化しにくい鋼種が望ましい。

  • ガスケット

    静止部分に用いる流体の漏れ止めでOリングやパッキンとも呼ばれる。内燃機のシリンダー等や配管継手フランジ面、ポンプケーシング割り面などに用いる。

  • ベローズ・ラセン管

    フレキシブルチューブともいわれる、しなやかに曲がるホースのこと。製造方法としては長手溶接での造管後にフレキシブル加工する成形ベローズと周溶接で製造する溶接ベローズに大別される。用途としては自在に動かす配管や配管の振動の吸収。および伸縮部のカバーなどが主なるもの。