NAS 64 高強度・高耐食二相ステンレス鋼用素材
特徴
NAS 64(SUS329J4L相当、UNS S32506)は日本冶金工業が開発したオーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼で、SUS 329J1に比べ極低C,高Mo組成であるため、耐局部腐食性が特に向上しており、燐酸、酢酸、各種硫黄化合物などに対してすぐれた耐食性を有する材料です。
化学成分
単位 (%)
C | Si | Mn | Ni | Cr | Mo | N | |
0.012 | 0.56 | 0.70 | 6.30 | 25.00 | 3.30 | 0.10 | その他 |
物理的性質
密 度 g/cm3 | 7.80 |
比 熱 J/(kg・k) 25℃ | 460 |
固有電気抵抗 μΩ-cm | 88.7 |
熱 伝 導 率 W/(m・k) 25℃ | 12.6 |
平均熱膨張係数 10-6/℃ 30〜200℃ 30〜300℃ 30〜400℃ |
10.46 11.39 12.24 |
縦弾性係数 N/mm2 | 19.6x104 |
磁 性 | 有 | 融 点 ℃ | 1420〜1462 |
機械的性質
形状 | 寸法 (mm) |
0.2%耐力 (N/mm2) |
引張強さ (N/mm2) |
伸び (%) |
硬さ (HV) |
曲げ 180° |
冷延板 | 1.6 |
732 | 853 | 23 | 258 | r=0.5t われなし |
熱処理
NAS 64は熱処理による硬化はありません。固溶化熱処理温度は1050℃〜1080℃加熱後急冷が必要です。
冷却はできるだけ早くして脆化(475℃脆性、σ(シグマ)脆性)温度範囲にさらされる時間を少なくする必要があります。
加工性
熱間強度は950〜1150℃でSUS430並みです。900℃以下では急激に強度が上昇するので注意が必要です。
熱間加工する場合は、割れ防止の点から、最高加熱温度は1200℃程度まで、鍛造終了温度は950℃程度にすることが必要です。熱間加工後は固溶化熱処理が必要です。冷間成形性はSUS304に比較して耐力が高く伸びが低い点に注意して下さい。
溶接性
溶接は標準オーステナイト系ステンレス鋼と同様TIG、MIGおよび被覆アーク溶接が可能です。
溶接棒はSUS 329J4L相当溶接棒を用いますが、予熱や後熱の必要はありません。
酸洗
酸洗は、硝酸一弗酸の混酸を使用しますが、304に比較してクロームが高い分だけスケールは若干落ちにくいので、酸洗前にできるだけ短時間のアルカリ浸漬を行うか、またもし可能ならばショットブラストをかけると非常に有効です。
特性
・ 従来のSUS329J1に比べ、耐孔食性は倍以上あり、特に耐すきま腐食性は数段すぐれています。
・ SUS316が孔食や応力腐食割れ等の局部腐食で使用に耐えない環境ですぐれた性能が発揮されます。
・ SUS316に比べ、強度が高く、機械構造用部材としても使用できます。
用途
広範囲の化学装置用材料として、各種公害防止機器、石油化学、繊維、パルプ、不純温水、海水取扱機器等で、SUS316が使用に耐えられない場所に適しております。強度が高い点からは、地熱発電用などの機械的強度と耐食性の双方が要求される苛酷な環境でも使用できます。
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