特色製品

NAS 600 ニッケル基合金

特徴

クロム14〜17%を含むニッケル基合金で、高温度における耐酸化性が極めて優れている高級耐熱合金です。また各種の酸及びアルカリに極めて優れた耐食性をもつ耐食合金としても広い用途を持っております。

化学成分

                                                            単位 (%)

合金名 C Si Mn P S Ni Cr Co Fe
NAS 600 ≦0.15 ≦0.50 ≦1.00 ≦0.030 ≦0.015 ≧72.00 14.00
〜17.00
≦1.00 6.00
〜10.00

対応鋼種

ASTM(ASME):UNSNO6600,JIS:NCF600

物理的性質


     密      度    g/cm3 8.43
     比      熱    J/(kg・k)        25〜100℃ 444
     固有電気抵抗    μΩ-cm 103
     熱 伝 導 率     W/(m・k)           100℃
                                   200℃
                                   400℃
                                   600℃
                                   800℃
15
17.2
18.8
20.9
22.6
     平均熱膨張係数   10-6/℃          0〜93℃
                                0〜316℃
                                0〜538℃
                                0〜760℃
                                0〜982℃
13.3
14.2
15.1
16.0
16.7
     キューリー点     ℃ -124
     縦弾性係数      MPa 213,785
     横弾性係数      MPa 75,511
     ボアソン比 0.29
     融     点     ℃ 1371〜1427
     導  磁  率     μ(at 21℃, 200 oersted) 1.006

機械的性質

機械的性質の一例を次に示します。

常温における機械的性質

熱処理 0.2%耐力
(N/mm2)
引張強さ
(N/mm2)
伸び
(%)
硬さ
(HV)
固溶化熱処理 206〜314 549〜686 35〜55 140〜170
圧延のまま 618〜863 824〜1030 2〜15 ≧260

高温における機械的性質

 高温短時間引張強度(棒材によるデータ)

温度
(℃)
0.2%耐力
(N/mm2)
引張強さ
(N/mm2)
伸び
(%)
20 252 624 47
427 203 610 49
538 196 580 47
649 182 448 39
760 117 189 46
982 27 52 118

 クリープ・ラプチャー強度

  各温度におけるクリープ・ラプチャー強度を下記に示します。

熱処理 試験温度
(℃)
クリープ・ラプチャー強度
(N/mm2)
10hr 100hr 1,000hr
固溶化熱処理 732 137 93 64
871 56 36 25
982 30 20 13
焼なまし 538 511 345 234
649 234 158 100
760 89 58 38
871 52 33 21

熱処理

NAS 600は、折出硬化型合金ではありません。したがって、熱処理による時効硬化処理は可能です。通常用いられる熱処理温度は次の通りです。
        固溶化熱処理 1050〜1150℃ 空冷または水冷
        焼 な ま し  800〜1050℃    空冷または水冷
        応用除去焼鈍  550〜 760℃  空冷または水冷
 なお本合金は1050℃以上になると結晶粒の粗大化が発生する傾向が強いので注意を要します。また加熱に際してはイオウの少ない燃料を用い、しかも加熱前の表面の油脂類の除去が必要です。

切削性

高ニッケル合金の特徴として切削性はオーステナイト系ステンレス鋼に対して劣ります。切削は高速度鋼工具でも可能ですが、なるべく超硬工具を用い、送り速度をおそくし、切込みは深くして下さい。施盤加工では高速度鋼工具の場合1050〜1350mm/min、超硬工具の場合3000〜5250mm/min程度の送り速度が標準です。切削後溶接または熱処理を施す場合には潤滑油を完全に除去することが必要です。

加工性

熱間加工は比較的容易であります。加熱温度は1150〜1180℃、熱間加工温度は1180〜1000℃、軽い加工は850℃程度まで可能ですが、650〜850℃の温度範囲は割れを発生することがありますので避けて下さい。この場合にも燃料はできる限りイオウの少ないものを選ぶことが必要です。
 冷間加工はオーステナイト系ステンレス鋼よりも容易で、モネルと同様です。
 溶接はメタルアーク溶接、ティグ溶接、および抵抗溶接などオーステナイト系ステンレス鋼とほぼ同様の方法を適用することができます。開先加工は機械切削が望ましく、またU、V開先角度は広くとって下さい。この場合とくに表面の汚染を嫌いますので、溶接部の清掃については特に留意ください。

特性

NAS 600はその組成から、非常に多くの腐食性環境に対して耐食性を発揮することができます。クロム成分中の有は酸化性の腐食環境における耐食性を純ニッケルよりもすぐれたものにしております。それと同様にニッケル含有量が大きいことにより還元雰囲気における耐食性も維持させとおり、またアルカリ水溶液による腐食作用に対して優れた耐食性をもっております。なお耐応力腐食割れに対し強いのも本合金の特長であります。
 高温における耐酸化性も極めて良好で、長期連続の空気酸化に対しては1100℃まで耐え、イオウを含有しない還元性雰囲気(H2またはCO)では1150℃まで使用することができます。酸化性の含イオウ気中、例えば亜硫酸ガスを含む空気中で完全に使用できる温度は815℃までであります。しかしながら硫酸水素を含む還元性雰囲気では535℃を限界とします。高温に対する大きな特徴は、550〜750℃の範囲で脆化しないことであります。
 その他窒素、水素および浸灰に対してすぐれた耐食性があり各種熱処理炉に用いられます。また湿った塩素、臭素には侵されますが、高温の塩化水素および塩素の処理には極めて有用で、塩化水素に対しては、約540℃、塩化ガスに対しては510℃までの使用に耐えることができます。

用途

原子力発電プラント、熱交換機、各種化学工業用蒸発缶、酸およびアルカリ工業用機器、ジェット・エンジン部品、アフターバーナー部品、熱処理炉部品、その他高温で使用される部品に用いられます。

  

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